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平塚晶人氏=文 「地図 自立した登山者へのパスポート」

  • Posted by: はっぴー
  • 2011-06-30 Thu 23:23:00
  • もの想い

「地図 自立した登山者へのパスポート」 平塚晶人氏=文

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 丹沢をフィールドに地図読みの講習会を主催するようになって1年半になる。
参加者の主体は40代50代の、登山を始めて5年以内の方たちだ。

 人に地図の読み方を教えておいて変な話だが、私は参加者によく、
なぜ地図を読めるようになりたいと思ったのですか、と尋ねる。
沢登りから山を始めた私にとって、地図読みは必須の技術だった。
だから、地図読みに対する一般登山者のニーズには不案内だし、
それゆえに関心も高かったのである。

 回答はさまざまである。直接的には、現在地を正確に知り、
道迷いを防ぎたいという動機が多い。しかし、そう答える人のほとんどは
道に迷った経験をもっているわけではないのだ。

 では、根本にある理由はなんなのか。それを多くの回答者から抽出して
ひと言で表わすと、「自分の山歩き」をしたい、ということになるかと思う。

 講習会の参加者のなかに、強く印象に残る58歳の男性がいる。
その方は、地図が読めるようになるにつれ、丹沢の一般コースではない尾根を
ひとりで歩くようになった。年齢のこともあるし、当初は心配した。
しかし、見知らぬ尾根に入る前には、入山口と下山口を偵察し、
ねらいを定めたルートの様子を近くの山から遠望するなど、完璧な準備をしてから
山に行っているとの説明を聞き、今では私も応援している。

 こうした例をあげると、「自分の山歩き」とは、一般コースを外れることと
誤解されそうだが、もちろん違う。自分で考え、自分で判断する山歩き、
それが「自分の山歩き」である。

 パーティを組んで山に入るとき、他者に精神的に依存してしまうと、
地図を読む必要は限りなくゼロになる。いわゆる、連れて行ってもらう山登りである。
たとえ山岳会のパーティで厳しいルートに挑戦したとしても、
リーダーに頼りきってしまえば、それは連れていってもらう山だ。
一方、ツアー登山であっても、山行に主体的に臨めば、「自分の山歩き」となりうる。

 地図を読めるようになりたいという思いの出発点には、連れていってもらう山は
卒業して、「自分の山歩き」を始めたいという願いがきっとある。
件(くだん)の58歳の男性は、日の長い時期であっても、午後2時半を過ぎたら
未知の尾根には入っていかないと話しておられた。
思考錯誤を経て生まれた自己の基準。まさに自分で考え、判断する、主体的な
山歩きである。それがどれだけ楽しいものか、容易に想像できる。
そして、自分自身で山と向き合おうとしたそのとき、地図読みは欠くべからざる要素
となるのだ。

 地図を読むとは、等高線と実際の地形を照合し、山を立体的にとらえることである。
すると、自分の歩くコースが歩く前からイメージできる。そして地図を読みこなせれば、
現在地を正確に把握できる。ここが登山地図との相違点だ。
登山地図では、2地点間の所要時間に目がいきやすい一方で、コースの起伏のイメージは
おろそかになりがちだ。そのため、めざす山小屋の手前に標高200メートルの登りがある
ということすら知らないまま歩きかねない。それは登山地図に連れていってもらう山歩きに
すぎないのである。

 GPSについても同じことがいえる。GPSはルートをナビゲーションする機能を
駆使できなければ、その威力が半減する。しかし、そのためには、地図を読んで
山を立体的に把握する能力がどうしても必要になる。たんに数値から現在地を把握しても、
地図が読めなければいざというときの対処はできない。それは、自ら山に向き合っている
登り方とはいえまい。

 自ら考え、判断して山を歩く。先を読み、事態を予想し、自分を律する。
地図は、そのような自立した登山者になるための必須アイテムなのである。



以下は 著書「山岳地形と読図」から一部抜粋

 地図読みは、山頂を目指す、花を楽しむ、山岳写真を撮る、おいしい空気を吸う
といった、山登りの目的と同列の位置にはない。あえて言うならば、その前提である。
しかし、それはことのほか楽しい前提である。現在地がどこなのかを特定する作業は、
ときとして論理的な思考をともなう。そのおもしろさ、奥深さをひとりでも多くの方に
味わっていただきたいと思う。



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何年か前に、平塚さんの地図読み講習会に4コース参加した。
このとき、文中に登場する男性と3回一緒になった。
たいへん熱心な方だったなぁ、と記憶している。
今も、お元気に山を歩いていらっしゃるだろうか・・・・・









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Comments: 6

賀来 URL 2011-07-01 Fri 05:27:07

ハッピーさん、おはようございます。ご無沙汰いたしております、賀来です。

とても合点のいく、文章ですね。

自分で考える山登り、自分で判断する山登りと言い換えてもいいかもしれない。「考る」「判断する」というのは山登りの楽しさそのものだということを改めて思いました。

蒸し暑い日が続くので、ことさら山へ行きたくなっちゃいますね。

私の内緒のブログにリンクを張らせていただきました。不都合があればおっしゃってください。

はっぴー URL 2011-07-01 Fri 13:33:08

賀来 さん、こんにちは!

コメント、ありがとうございます。

そうですね、この文章は私の言いたいことが、的確に表現されていますので、

大切にしています。最近は、大事にしまったものほど、見つけにくくて困っています(笑)


賀来 さんのように、高山、低山、どこでもOKとはいきませんので、

これから行き場所に悩みます。このごろ週末のお天気も、はらはらドキドキですし。


ありがとうございます。私の拙ブログを、“秘密の隠れ家”に入れていただけて、たいへん光栄です。

私も作りたくなりました。でも、こちらが空き家になるかもしれませんね(笑)


den URL 2011-07-03 Sun 23:38:45

はっぴーさん、こんばんは。

前回コメントしたので、今回も何か記したいんですが。
”山に行くには各々目的があって”、その実現のために共通するのが”山へ行くこと”でしょうか。個々の目的と手段としての山登り。自分と見詰め合ったり、語り合ったり、その準備として自分になすべきことが、地図を読んだり、天気を読んだり、1泊できる道具を揃えたり、体力作ったり、助けてもらえる仲間と一緒に行ったり etc。
今日は移動が長くて疲れてしまいました。しかも他人が決めたルートをついて行くだけでしたので、ちと疲れた。他の人に教えてもらって経験積んで、他の場面で活かせれば問題ないでしょうが、人によっては主体性も重要でしょうかね?
怪我しないようによく検討してチャレンジしていきましょう。

はっぴー URL 2011-07-04 Mon 18:37:30

den さん、こんばんは。

コメントは いただけると、とても嬉しいですが、
ご覧になっていただくだけで十分ですので、どうぞ無理されませんように。

山で遊ぶ?目的は人それぞれで、いろいろありますが、
やはり同じ目的同士だと、スムーズに楽しめるような気がしますね。
私は、植物なんか好きなので、どうしても見つけると写真を
撮りたくなります。そんなこだわった写真ではありませんが、
もし、同行者があまり関心がなければ、時間を取って「悪いかなぁ」と遠慮がちになります。

鳥見もそうですし、地図読みも然りです。
ですから、同じものに興味を持つ仲間というのは、貴重な存在だと思います。
そういう点で、Vルート好きなニカニカの皆さんは、とてもホッとする存在です。

私の場合、どこに行くか(目的の場所)と、誰と行くかが大事な要素です。
行きたい所に、楽しいメンバーと行くのが一番、自分が満足する山遊びかな・・・
そんな山を続けられたらいいなぁと思っています。

ardbeg URL 2011-07-06 Wed 14:26:52

はっぴーさん

平塚さんの「山岳地形と読図」、私が山を始めてすぐに買った唯一の参考書です。
山を始めると同時に丹沢のVルートにのめりこんだ自分にとって、この本はまさに【バイブル】ですね。

それにしても、賀来さんともお知り合いとは...お顔が広い。
その経験値にして丹沢Vにどっぷりのお〇〇ぶりが以外です。
また、ご一緒するのが楽しみです。

はっぴー URL 2011-07-06 Wed 21:39:51

ardbeg さん

そうでしたか。この本は、写真がたくさんあって、分かりやすいですよね。
では、もしかしてardbeg さんとは読図の方法が同じなのでしょうか。
実技講習会は、昨年の春に一応終了されたようですね。

賀来さんとは、一年前に偶然 一軒屋避難小屋でお会いしたのです。
私が隠れファンで、ピピッとひらめき、ずうずうしくお声をかけました。

“その経験値”とは、誤解です。間は空洞ですし、山復帰は本人も想定外でした(笑)
こちらこそ、今後とも どうぞよろしくお願いします。

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